大人の発達障害と障害年金(厚生年金)|診断名より「生活の困難さ」が見られるポイントまとめ
大人になってからASD・ADHD・学習障害(LD)などの発達障害と診断された場合でも、一定の条件を満たせば障害年金(障害厚生年金)を申請することは可能です。
重要なのは「発達障害という診断名があるかどうか」ではなく、日常生活や就労にどの程度の困難が生じているかという点です。
障害年金の審査では、初診日・保険料納付状況・障害の程度という3つの要件が重視され、心理検査(WAISなど)はあくまで生活上の困難さを裏付ける補助資料として扱われます。
本記事では、大人の発達障害と障害厚生年金の関係について、制度の基本から心理検査の位置づけ、遡及請求の考え方までを実務目線で整理します。
なお、内容は制度の仕組みを整理することを目的としており、個別の受給可否を断定するものではありません。
大人の発達障害は障害年金の対象になる
ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD、学習障害(LD)などの発達障害は、公的制度上 「精神の障害」 として障害年金の対象に含まれます。
また、
- 子どもの頃に診断されていなかった
- 大人になってから心理検査で診断された
このようなケースでも、診断名を理由に申請自体が否定されることはありません。
ただし、
診断=受給 ではない
という点ははっきり押さえておく必要があります。
障害厚生年金で見られる3つの要件
初診日要件
障害の原因となった症状について、**初めて医療機関を受診した日(初診日)**に、
国民年金または厚生年金に加入している必要があります。
発達障害の場合の注意点として、
- 「発達障害と診断された日」が初診日ではない
- うつ病・不安障害・適応障害などで先に受診していた日が初診日になることが多い
という特徴があります。
👉 カルテや受診状況等証明書による裏付けが重要になります。
保険料納付要件
初診日の前日において、以下のいずれかを満たしている必要があります。
- 初診日の属する月の前々月までに、保険料を3分の2以上納付(または免除)
- 直近1年間に未納がない
この要件を満たしていない場合、障害の程度に関わらず不支給となります。
障害の程度(等級)要件
障害認定日(原則:初診日から1年6か月後)または請求時点で、
国の定める基準により 1〜3級 のいずれかに該当する状態である必要があります。
精神・発達障害における等級の目安(障害厚生年金)
- 1級 日常生活のほとんどに援助が必要な状態
- 2級 日常生活全般に著しい制限があり、相当な援助が必要な状態
- 3級(厚生年金のみ) 社会性や対人関係、集中力等の問題により 労働に著しい制限がある状態
ここで重要なのは、
診断名ではなく、生活と就労への影響の大きさ が判断材料になる点です。
心理検査(WAISなど)は「決定打」ではない
WAIS・WISC・AQなどの心理検査は、
- 認知機能の凹凸
- 注意力・処理速度・社会性の特性
を客観的に示す重要な資料です。
ただし、障害年金の審査では、
心理検査の数値 = 等級
とはなりません。
審査で最も重視されるのは、**診断書に記載された「日常生活能力」と「就労への影響」**です。
心理検査は、それらを 裏付ける補助資料という位置づけになります。
心理検査を受けるタイミングの考え方
初診から数か月で受ける場合
メリット
- 早期に特性が明確になる
- 経過資料として使える
デメリット
- 障害認定日から離れており「現症」として弱い
- 軽度と判断されやすい
障害認定日前後(初診から1年6か月後)に受ける場合
メリット
- 現症の客観的根拠として強い
- 診断書との整合性が高まる
- 2〜3級判断で有利になりやすい
デメリット
- それまでの経過記録が少ないと、一時的と見なされる可能性
👉 実務上は、経過を積み重ねたうえで認定日前後に検査が理想です。
失業保険と障害年金は併給できる
障害厚生年金と、雇用保険の基本手当(失業保険)は 併給可能です。
- 発達障害があること
- 障害年金を申請・受給していること
これらが、失業保険の受給資格を直接奪うことはありません。
生活保障を切らさずに申請準備を進めることができます。
障害年金の遡及請求について
障害年金は、
- 障害認定日まで遡って請求可能
- 請求日から 最大5年分(時効) まで支給対象
となります。
👉 請求が遅れると、本来受け取れたはずの月分が永久に失われます。
タイミング管理は非常に重要です。
診断があっても、なくても申請は可能
発達障害と診断されていなくても、
- 抑うつ状態
- 不安障害
- 精神機能の低下による生活・就労制限
があれば、**「精神の障害」**として申請は可能です。
判断されるのは、あくまで
- 初診日
- 保険料
- 生活・就労の実態
です。
まとめ|制度が見ているのは「名前」ではなく「現実」
- 大人の発達障害は障害年金の対象になる
- 心理検査は有効だが主役ではない
- 等級判断の核心は 日常生活と就労の困難さ
- 準備とタイミングで結果は大きく変わる
制度を正しく知ることは、「甘え」でも「ズル」でもありません。
現実に困っている事実を、制度の言葉で伝える。
それが障害年金申請です。
